染み

ミートソースに入ってるセロリ、おいしい

死ぬほど好きな作品

モノノ怪という作品が好きだ。

 

2006〜2007年に放送していたアニメ。

いつだったか忘れたけどブックオフで突如コミカライズに出会い、めちゃくちゃに好きすぎて当時周囲にいたオタク全員に押し付けて漫画を読ませた。

漫画を読ませた9割の人間から「よくわからん」みたいな感想をもらった。

別にそれに何か反感を抱いたわけじゃないんだけど、「なんてことだ」と思った。

こんなにすげー作品なのに!と思ったんだけど、個々人にとってそういう特別な作品はあると思うので、オタクのそういう作品についての妄言だと思って読んでください。

 

アニメも漫画もすごいんだけど、そこらへんに関してはいろんなわかりやすいまとめがあるので検索して読んで欲しい。

個人的な思いだけダラダラ並べる。

 

私がすごいと思うのは何点かあるんだけど「薬売り」という主人公であって主人公でないひとの存在と在り方、描きかたが好きだ。

「江戸化猫」「大正化猫」シリーズの始まりと終わり(2020年3月時点)である2作品に出てくる薬売りは、似て非なる存在に見える。見せられている。

時間軸すら「江戸化猫」→「大正化猫」で確定としていいかわからないような物語の描き方(この2話に限らず、モノノ怪シリーズ全体通してそう)なんだけど、この2話は絶対に何かの因果でつながっていて、その因果を渡って薬売りはここにいる。少なくとも、この2作品を見た人はそう思ってしまう、ような気がする。

同じ見た目のひとを同じ作品で扱っていながら、似て非なるように見せることができる。私は今も昔もこういうタイプの作品がすごく好き。ていうか、「ああ、一本とられた!」と思うことのできる作品が好き。

薬売りというのは「山田太郎」みたいなひととして個の識別ができる名前が一切明かされなくて、「妖を斬る」ためにフラッと現れる「自称・ただの人間(または薬売り)」、ただそれだけのひとなんだけど、「江戸化猫」「大正化猫」は、そのフラッと現れるひとが、同じ「化猫」という妖を斬るために江戸と大正、その両方に現れているんだよね。

しかも、妖を為す「形」「真」「理」を暴くために出てくる証人たちは、「江戸化猫」「大正化猫」で同じ顔をしている。名前も境遇も違うけど。薬売り、一体どう思ったんだろう。いや、アニメの見せ方でしょと言われたらそれまでだし、薬売りはそれに対してな〜んも言及しないからわからないんだけど、そういうの考えてしまうよな。

そういうの考えさせるのが天才なんだよな。そういう作家になりたい。

あとこれはモノノ怪を知ってる人にしかわからないと思うんですけど、「大正化猫」で小田島様ポジの顔の人がいなかったのって何なんですかね。加世ちゃんはいたのにな。誰か答えを教えてくれ。小田島様は特別なのか?いや「江戸化猫」見てるとあのひとは特殊なのかもという気もする。そうなのかもしれない。

 

次に、女性の描き方が好きだ。

絵的な意味でももちろんすきなんだけど、それぞれの話の中で必ず、女性がキーになっている。

自分が女子校だからとか関係ないと思いたいんだけど、時代設定もあってか、とにかく女性の扱いというものを考えさせられる。

女性たちは美しくて、妖しくて、人ならざるものに近い、または妖そのものになっていく。薬売りも美しくて妖しくて妖に近い(「鵺」のときとか特に意識されてたと思うんだよな)けど、妖を斬る存在なんだよな。明らかに人ではないと思しきハイパー(変身後、こう呼ばれがちだし私もこう呼んでいる)と何かしらの繋がりがあり、かつあんだけ耳尖ってるの見ると、薬売りも人間じゃない、妖に近い存在なのかも知れない。でも「ただの人間、ただの薬売り」って言う。

女性の話から逸れてしまった。

「江戸化猫」の珠生、「座敷童子」の志乃、「海坊主」のお庸、「鵺」の瑠璃姫(はちょっと違うような気もするが)、「のっぺらぼう」のお蝶、「大正化猫」の節子。

彼女たちは何かしらに縛られていて、当たり前のように自由に何かを選ぶ、何かをするということが難しい環境にある女性たちだった。

多分、描こうと思えばいくらでも「男尊女卑の時代、苦しんだ女性」を描けたと思うんだけど、明確にそれを感じたのは「大正化猫」くらいで、他に関してはそれよりも前に「むごい」とか「怖い」「不気味」が来てしまうので、私は正直女性の扱いがどうとか、妖に近いのは皆女性だったとか、全然気付いていなかった。全部怖いので。

そんな彼女たちが様々な形で妖と接したり、妖を生み出したり、そういう時って妖しくて怖くて美しい。凄絶だ。

「江戸化猫」「大正化猫」なんて薬売りが結構苦労しながら戦っているのでマジで強いし妖ほんと怖いんだけど、妖の怖さの中に、紛れもない美しさや気高さを感じることもできる気がする。

というか、妖の「形・真・理」を聞かされると、そういうものがある、と認識せざるを得なくなると思うんだよな。

怖い、倒さなくてはならない、と思う存在の側や中に、何かがままならずこうなってしまったものや人の影を感じる。情が湧いてしまう。

怖いものにほんのちょっと隠し味を加えるのが上手すぎる。

「形・真・理」が分かった時点で大体妖を作り出す原因になった人間はどうにかなっちゃってることが多いので、余計に妖に情が湧く。もうちょっと復讐してもいいんだよ、とか思ってしまう。私は妖退治に向いてない。

 

めちゃくちゃ簡単にまとめると怖いものを倒すというかしずめるお話なんだけど、結果が分かっている話の中でそうやって色んなことを考えさせてくれたり、大いに感情移入させてくれるってすごいことだと思う。

悪に見えるものを悪として見えないように徐々に情を湧かせてくる。急に来るんじゃないんだよな。あっ、かわいそうかも、あっやっぱり、あっ、あっ…みたいな感じで、滲み出てくる。情を引き摺り出されてるというのが近い。

多分他にそういうアニメや作品は山ほどあるけど、私は最初に出会ったのがモノノ怪だったので、モノノ怪を一生の指標にしてついていく。

 

私がモノノ怪で一番好きなのは「鵺」なんだけど、これ本当に出てくる妖が一番妖(あやかし)していて好きだ。

私たちが知っている鵺という妖怪をうまく説明した上で、話の中で妖として出てくる鵺はすごくオリジナリティがある。

そして、妖は人が為す、という要素もすごく綺麗に入っている。

鵺に辿り着くまでの道のりも、階段を登っていくようでわかりやすい。第一関門を突破したので第二関門に挑むぞ、みたいな感じで、話の流れが比較的わかりやすいと思う。

あと鵺はめちゃくちゃ怖い。無理な人は無理なビジュアルだと思うので無理しないでほしい。

とは言ったんだけど今アマプラで観れるから是非観てほしいよな。冒頭は怖いけどテンポいいしギャグ多いし、台詞回しがめちゃくちゃいい。語感の良い台詞回しが異常に好きな人、ほんと是非見てほしい。

 

前にツイートで難易度(個人見解)を書いたので、小指の先くらいの参考にしてほしい。

あと、死ぬほど役に立たない私的オススメポイントもついでに添えた。

化猫(モノノ怪)≫≫のっぺらぼう≫鵺>座敷童子>海坊主≫江戸化猫(ayakashi)

・「江戸化猫」

何かこだわりがなければこれから見たほうがいいと思う。モノノ怪の始まり。よく喋る薬売りさんがかわいい。最初からこんなに重くていいのかというくらい重い、と思う。

・「海坊主」

「江戸化猫」と登場人物の繋がりがあるので、続けて見るとちょっと得。柳幻殃斎がかわいい。話が解決したと思ったらラストにめちゃくちゃな謎を残していった。どうなったんだよアレ!誰か教えてくれよ!!!!

・「座敷童子

妖のビジュアルがあんまり怖くない。なんというか、怖いよりは「寂しい」が前に来る、そんな感じ。泣けるという人もいるんじゃないかな。私は最近見直したら改めてグッと来た。

・「鵺」

上でも述べた通りの理由でイチオシ。薬売りの数ある名言(個人の見解)のうちのひとつ「うっかり、うっかり」が聞ける。

・「のっぺらぼう」

何でとは言わないけど皆「狐面の男」好きになるような気がするな。個人的には一番怖い妖だと思うし、現代でも生まれてそうだなと思う。皆の心の中にもいるのかもしれない。

・「大正化猫」

めちゃくちゃ怖い。終わり、というかラスボスにふさわしい。エンディングでOP曲流されてる感じがする。話が進むにつれてオイオイオイ…て感情が増す。あと、引っ掻く音が無理な人は気を付けたほうがいい。終わり方がすごく好き。

 

1話でも見たら私に連絡ください。是非、あそこ不思議だった、あれなんなんだろうって語りたいので。